整理収納アドバイザー ポレポレ日記

40代 おじさん整理収納アドバイザー

動線とアクション数と高さ

「先輩、どう思いますか?」

同僚から声を掛けられました。

その同僚は僕の8歳年下ですが、教師になったのは僕より1年早いということもあり、一応先輩にあたる同僚です。(でも僕のことを先輩と呼びます...)

僕は基本、年下であっても敬語を使うようにしています。

相手と良い関係を築くために必要なことだと思っているし、相手に対するリスペクトの気持ちを忘れたくないからです。

「言葉使いは行動に繋がる」と考えています。いつでも謙虚でいたいと思っている僕にとっては、言葉に配慮することは意識し続けたいことであると思っています。

そういったこともあり、声を掛けてきた同僚に対しても、丁寧に話すことを意識しています。

声を掛けてきたのは、自分なりに収納を工夫したから見て欲しいとのことでした。

「どれどれ...」と思い、同僚の教室に行ってみると...。

子どもたちが使う、教科書を入れるファイルボックスの置き場所を新たな場所に変えたとのことでした。

最近の小学生は1人1台ずつタブレットが渡されています。

そのタブレットを毎日持ち帰ることもあり、ランドセルの重量は結構な重量になります。(筋トレレベルの重量だと思います...。)

そういった子どもたちの負担を減らすために、宿題にない教科の教科書やノートは学校に置いて帰るようにしているのです。

その置いて帰る教科書やノートを入れるためのファイルボックス。言ってみれば置き勉ボックスとも言えるモノでもあるように思います。

子どもたちは各授業の前にそのボックスから授業に必要な教科書やノートを取り出して授業に臨みます。

社会科がある時は社会科の用意を、理科がある時は理科の用意を的な感じで準備をするリズムが出来ています。

そのファイルボックスは子どもったちにとっては頻繁に使うモノになっているのです。

僕はそういった生活の中で頻繁に使うモノこそ、収納にこだわるべきだと思っています。

僕が考える収納とは、「モノの定位置を決め、モノを使いやすくする」ことです。

だから、そのファイルボックスの定位置は子どもたちにとって、使いやすい場所かどうかはとても重要なことだと考えています。

子どもたちの教室での動線を考え、その動線に合っているのか、無駄な動きが増えないのかということを考えて定位置を決めることが大切だと考えています。

僕のクラスでは、そのファイルボックスは教室の後部のランドセルを置く棚の上を定位置にしています。

なるべく教室に置くモノは減らしたい、見えないように収納したいと考えてはいますが、子どもたちにとってその場所が一番使いやすい場所だろうと考えてその場所を定位置にしています。

子どもたちの負担の少ない場所がその場所だと思い、1学期の間はとりあえずその場所を定位置にしました。

その結果、特に問題もなかったように思うし、他に良い場所もなさそうなので2学期もその場所を定位置にしようと思っています。

声を掛けてきた同僚も同じ場所を定位置にしていました。ただその同僚はその場所だと掲示をする時に少し邪魔になってしまうということに問題を感じていたようで、違う置き場所を考えているとのことでした。

もちろん教室の環境を整えていく中で、掲示物に配慮することは大切な観点です。僕も掲示物を充実させることは子どもたちの充実した学校生活に繋がることだと考えています。

そういったこともあり、同僚が新たに考えた定位置は、新たに棚を用意し、その棚に置くというものでした。

収納のために新たな棚を増設し、そこに置くことにしたとのことです。

一生懸命考えた定位置。一生懸命なその姿からは「快適に過ごせる教室にしたい。」という同僚の気持ちが溢れていたように思います。その気持ちに感銘を受けたのは嘘でも何でもありません。

ただ、僕はその定位置にいくつか違和感を感じてしまいました。

まず1つ目が、「アクション数が増える」ことです。

教科書を取り出すための動作が増えてしまっているのです。

今までの置き場所であれば、ファイルボックスからそのまま必要なモノを取り出すことが出来ていました。なぜかと言うと上部に何もないからです。

上部に何もないので、1アクションで必要なモノを取り出せます。

しかし、同僚が考えた新たな置き場所だと天井があるため...

  1. 一旦手前に引き出す。
  2. 必要なモノを取り出す。
  3. 引き出したファイルボックスを戻す。

という3つのアクションが必要になってしまいます。

                      1.棚から引き出す

2.必要なモノを取る                3.棚に戻す。

それが教科書、ノートを取りに行くたびに必要になってくるのです。

確かに棚を定位置にすることでスッキリさせることは出来るように思います。

ただ、子どもたちの視点に立つと、アクション数が増えることで負担は増えるようになると思います。

きっと、チャイムが鳴っても、この棚の前に数名の子どもたちが並んでおり、急いで必要な教科書を取り出す姿が目に浮かぶように思います。

そして、そういった姿を見て教師のフラストレーションは溜まっていくのだと思います。「チャイムを守りましょう。」なんて言いながら...。

そしてもう1つ、「高さ」です。

教室の後ろの棚のスペースが空くことで、そこにモノを置きやすくしてしまうということです。

人がモノを置いてしまいやすい高さは目線から腰高くらいの高さと考えられています。

今はファイルボックスがあるからモノを置くことは出来ません。

でも、ファイルボックスがなかったら、丁度子どもたちに腹部あたりの高さになるのです。

棚の上は丁度子どもたちのお腹くらいの高さになります。

人は無意識に空いたスペースにモノを置いてしまうものです。しかも、一番起きやすい高さにスペースが空いているのです。

そういった観点からも、後ろにファイルボックスがあることは必要なことでもあるように思います。ファイルボックスがなかったら、たくさんのモノが置かれていくことが予想できます。

モノを見えなくし、スッキリさせる収納はとても大切なことです。

モノが見えない事が視覚的な配慮になり、心を落ち着かせることに繋がります。そういった収納を考えるのはとても大切なことだと思います。

ただ、モノが使いにくくなるような収納をしてしまうと、そこで生活する人たちにとってストレスの元になってしまいます。

教室の後ろにファイルボックスを置いていると、どうしてもモノが増えたように見えてしまい、心が落ち着かないように思います。ただ、子どもたちは授業中後ろを見ることはほぼありません。

そもそも、教室の環境を整えるのは、子どもたちのためです。

であるならば、ある程度は教室の後ろにモノが多くなっていたとしても、子どもたちは気にならないように思います。

定位置を決める際には、そこで生活をする人を想定することが重要です。

教室で中心になって生活をする子どもたち。その子どもたちの動線を考えること、アクション数に配慮し、高さを意識することは定位置を決める際には欠かすことの出来ないことです。

教室を心の落ち着ける場所にしようと考えた同僚の姿勢はとても素晴らしい姿勢だと思います。

ただ、その一生懸命考えたことが、子どもたちや教師のストレスの元になってしまうのは勿体無い事だと思います。

正しい方法で「整理・収納」をすることが大切だということに気付かされた出来事になりました。